第20回
塚原 妹美さん
ケトジェニクダイエットアドバイザーNo.029(歯科医師/医療法人社団宏礼会)
歯の病気の根本治療は「低糖質&高タンパク質」から!
口腔外科の専門医を経て、歯科クリニックを開業。歯の総合診療医として30年以上のキャリアを積む中、ケトジェニックダイエットに引き寄せられたのは、ご自身が乳がんを患ったことがきっかけでした。自分にとっての健康的な食事法としてだけでなく、歯科の病気を根本的に治療するための食事、お年寄りの「オーラルフレイル」予防として、子どもが健全に育つための食事として、ケトジェニックダイエットの考え方を広めようとしています。
食生活に目覚めたのは、乳がんを経験したから
ずばり、どんなタイプの歯科医師ですか?
最初は口腔外科が専門だったのですが、今はほとんど全部を診るというか、総合診療をやっています。
虫歯、歯周病、粘膜疾患、最近、堀ちえみさんの舌がんで話題になった粘膜の疾患、あと顎関節症もよくありますし、歯ぎしりとか噛み締め、そういうのも診ます。
歯科医になりたての頃は、病気そのものを見ていたという感じですね。病気を治すことだけ。でも、病気そのものを治すだけでは患者さんは幸せになれない。だってその人はまた繰り返してしまいますから。
患者さんをもっと理解して、患者さんの生活背景を含めて改善していかないと根本的には治らないんだな、ということを感じていますね。
ケトジェニックダイエットと出会ったのは?
2014年、姉に誘われて抗加齢学会に出席した時でした。白澤卓二先生と斎藤糧三先生がお話をされているのを聞いたんです。それがケトジェニックダイエット。すごく興味が湧きましたね。
その場に、お二人が理事長・副理事長をされている日本ファンクショナルダイエット協会のブースがあったので、すぐに資料をもらいまして。それが6月で、8月にはケト検を受けていたっていう感じです。
それまでの栄養や食事法に関しての知識は?
私、2008年頃に乳がんをしていまして。病気をしたことで、周りからいろんな知識をいただきましたし、オーソモレキュラー栄養療法を知って学び始めたり、糖質制限などの食事法を少し始めていた時期ではありましたね。
がんは生活習慣病の要素が多いことを、自分がかかって始めて知ったという感じです。がんになる前はもう何も知識はなくて、学校で習ったはずの栄養素のこともほとんど覚えていなかったほど。忙しくもあるので、食事に気を使った生活はまるでしていませんでしたね。
覚えているのは、夕方くらいに仕事していると、低血糖になって手が震えてきたりすることが時々あったんです。
当時は、お腹がすいて低血糖になってるんだなと思っていて、そこでチョコレートを食べたりクッキーつまんだりしていたんです。今思えば、ランチにカレーやパスタみたいな物を食べていたので、血糖値がかなり乱高下していたんだなとわかります。

実際にケト検を受けてみて、どうでしたか?
ケト検を受けたのは50歳過ぎてからで。年齢とともに代謝が悪くなっていて、何をしても全然体重が落ちないな~と思っていたんです。
それが、ケト検のレポート提出のためにケトジェニックダイエットを始めてみると、スッと、もうびっくりするぐらい簡単に体重が落ちていくんですよ。もちろん疲れにくくなりましたし、朝起きるのがすごくさわやか。体重が落ちたからではなく、体が軽くなる感覚があって「なんだか体が変わってきてるな」と実感しました。
もともとすごく太ってたわけではないんですけれど、やはりむくんでいたと思います。むくむのは糖質を多く摂りすぎていたからですよね。糖質は体に水分を溜め込んでしまう。本当に甘い物も、パンもご飯も麺も大好きだったので…。
ケトジェニックダイエットはただの糖質制限ではなかった。糖質を控えるだけではなくて、しっかり栄養素を摂るというところが違います。体を作ってるのはタンパク質なので、タンパク質をしっかり摂るということ。
そしてタンパク質をきちんと使うためには、たくさんのミネラルやビタミンが必要だということも認識しました。糖質制限をしただけでは、ただ痩せてしまうだけで不健康になるということも。
結果的にケトジェニックダイエットでは食べる量はすごく増えます。最初は食べきれるかなと思ったんですけど、食べることは好きだったのでそれも苦にはならなかったですね。ケトジェニクダイエットは向いていたと思います、自分に。
ゆるゆるケトジェニックダイエットで楽しく美味しく
現在、日常的にはどんな食事をしていますか?
そんなに厳しいケトジェニックにはしていないですね。セミケトジェニックくらいの食事。誰と一緒に食べるか、誰が作ったものを食べるか、どういう思いで作られた食材を食べるかということも栄養摂取には大事だなと感じていて。
ケトジェニックダイエットをゆるく続けながら、楽しく美味しく食べるっていうことには心がけていて、どちらかというと夜に重きを置いています。
夜はもちろん家でも作りますし、遅くなっちゃうと外食のこともあります。焼肉屋さんにも行きますし、焼き鳥屋さんなんかはけっこう便利です。
低糖質で高タンパク質、しかも野菜もいっぱい、だと外食に困るんじゃないかと思われることがあるんですが、何でも行けます。イタリアンも行きますし、和食も行きます。
いろんな物を少しずつ選べば全然困らないですね。例えばサラダなんてどこにもありますし、お肉やお魚、お豆が乗ってるサラダもあります。和食ならお豆腐やお魚も豊富にありますし、そんなに困ったことはないですね。
家ではできるだけシンプルな料理を作っています。時間がないということもあるんですけど、ケトジェニック的な食事を基本にすると、味覚がすごく鋭敏に、繊細になるんです。たぶんこれは皆さん経験してると思うんですけど。
濃い味のものや添加物が入っているものを食べ続けていると、その味に慣れてしまって、どんどん麻痺してどんどんエスカレートしてしまいますね、味覚だけでなく香りも。
その点、ケトジェニックな食事はそれをどんどんそぎ落としていくようなイメージ。すごくシンプルな味つけのお料理ほど食材の味を感じられて美味しいと思うようになる。ただ塩とコショウだけとか。
本当に味覚には敏感になって、今まで美味しいと思っていた物があんまり美味しく感じなかったり、口に入れると「あれっ、なんかおかしい」と感じるものが多くなりました。ケトジェニックダイエットを続けている人は大抵そうなっていくと思うんですけど。
それで私、調味料にすごく興味を持つようになったんです。今までどうして痩せなかったのかなと考えた時に、調味料もすごく重要だと。市販の調味料の裏側を見ると余計な物がたくさん入ってますよね。良くない添加物も多いし、知らない間に糖質を摂っていたりするし。
そして調味料を自分で作ってみようと思ったんです。きっかけになったのは「柚子コショウ」をつくるお料理教室に行ってみたこと。

無農薬、無肥料の自然栽培で作られた柚子と青唐辛子を使う教室だったんですが、自分でつくってみたら市販の柚子コショウとは全然違う! その香りの強さや味の爽やかさ、何につけても本当にそれだけで美味しい!
そこから「あっ、調味料って自分で作れるんだ」と気がついて。美味しい調味料があって、安全で安心で健康にもいい調味料があれば、それと食材だけでいい。そんなにいろいろ料理をしなくてもいいんだな、と気がつきまして。それで今度はお味噌、あとは醤(ひしお)も作ってみました。
お味噌も普通は大豆の味噌から入るんだと思うんですけど、ちょうど私が勉強させてもらっていたホリスティック栄養学で、ヘンプシードからお味噌を作る講座があったので、そこで初めて作ったんですが、このヘンプシード味噌が美味しすぎてやみつきです!
安全で安心なタンパク質を摂るのは大変だと思うんですけど、ヘンプシードはすごくタンパク質、アミノ酸が豊富な食材なんですよね。
調味料以外にも何か作ってらっしゃいますか?
あとは無添加の梅干しを作ったり。プランターで植物を育てたりしてます。唐辛子とかのスパイスを。
ただ、手をかけられないので生えてそのまま自分で大きくなってくれるような植物ですね。勝手に育ってくれるようなスプラウト、あとはトマトとか、ネギとか。枝豆も1回やってみたんですけど、うまく育たなくて(笑)。
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